銀行員としてIT部門に長年従事している中でありがちな、普段の平穏な業務を乱す3つの存在をご紹介します。
これらの存在が出てくることで今まで進めていた仕事をストップせざるを得なくなり、最優先での対応が必要になるのですが、それが何か分かるでしょうか。
いずれも私の経験に基づくものであり、それぞれの銀行のカラーの違いによって『●●』に入るものはマチマチかもしれません。その点についてはご了承ください。
いずれも漢字2文字です。
それではいってみましょう!
役員
ひとつめは「役員」です。
(すべての銀行に当てはまるかは分かりませんが)特に大手の銀行は非常に上下関係が厳しく、上司の命令はどんな無理難題も絶対です。
役員の指示はレポートラインを無視し、所属の部長や次長を飛び越えて、直接中堅のリーダクラスにも突然指示が飛んできたりします。
役員レベルになると理想と正論を振りかざし、現場の状況を考えずにイメージ先行で指示を吹っかけてきたりするので最悪です。
例えばこんな感じ。
「 雑誌でこんな記事見つけたんだけど、これをウチに当て嵌めたらどれくらい効果があるか数字出してくれない? 今日明日で。」
具体的な記述は身バレするので控えますが、こんな雑な指示が飛び交います。
正直、心の中では「ハァ?知らんし。」って感じですが、実際にはそんな心の声は表に出さず、今の仕事をストップして一生懸命数字を集め、その具体的な数字を根拠に推論してアウトプットしなければなりません。
そんな役員の思いつきで現場は疲弊します。
当局
2つめは「当局」です。
銀行内で「当局」というと、いろいろな政府機関を指します。
それは主に「金融庁」「全銀協」「税務署」「日証協」などです。
金融庁検査や税務署の監査など、銀行には定期的に立ち入り検査が入ります。大抵は実施の数ヶ月前にアナウンスされたりしますが、明確に時期は決まっていません。
監査の目的は、銀行がきちんと法令や制度に基づいて業務を実行しているか、必要な記録がきちんと保管されているかなど銀行業務のコンプライアンスやガバナンスに対するものだったり、顧客に怪しい取引がないか、脱税していないかなど、銀行の口座保有者に対する調査だったりと、さまざまです。
この立入検査が入るときには、ITだけでなく、銀行の各部門を総動員し協力して対応に当たります。検査スケジュールを当局と調整したり、必要とされる膨大なデータや資料をかき集めたり、当局の事前確認事項に対する回答を用意したりと、それは大変な作業です。
当局から指摘が入ると最悪の場合は業務停止命令を受けることもあり得るので、行員はみな戦々恐々としていて、何を差し置いても最優先での対応が必要になります。
ITにおいても、顧客にインパクトがある障害が発生すると金融庁への報告が必要となるため(ときには呼び出されます)、顧客インパクトのある障害には非常にシビアです。
顧客
3つめは「顧客」です。
「お客様は神様」と言うつもりはありませんが、業務において顧客を優先しなければならないことは事実です。
面倒臭い顧客のクレーム処理や要求には非常に時間を取られます。
例えば以下のような事例です。
- 定期預金の利息を自分で計算したら、残高が1円ずれてるんだけど。
- こんな取引をした記憶がない。
- 過去10年分の取引明細を紙で欲しいんだけど。
上記3つのうち最初の2つは、顧客の勘違いであることが多いのですが、たとえ勘違いであったとしてもきちんと取引の履歴や明細を確認し、計算根拠なりを具体的に示したうえで顧客が納得するように疎明しなければなりません。
3つめの要望に対しては銀行によっては手数料を取るところもありますが、我々の銀行では10年分であろうが全て紙で印刷して無償で郵送してあげる必要があり、ものすごく手間がかかります。
このように、ケースによっては一人の顧客対応に何人もが半日、一日費やされることも間々あるのです。
また、IT部門の人間はシステム障害が発生した際の顧客インパクトを最も恐れます。同じシステム障害でも
「顧客への影響や問い合わせは0件でした」と
「顧客への影響が1件ありました」
では今後の対応に雲泥の差があります。
顧客にインパクトがあった時点で、金融庁に報告する義務が出てくるからです。
障害が起きても銀行に電話しないでほしい。がみんなの本音です。
さいごに
いかがだったでしょうか。
全て実体験に基づいたものですが、銀行に限った話ではない内容もあったかもしれません。銀行は数多くの顧客の資産を預かっており、信用の上に成り立っている会社であるため、その信用を失うことや風評被害を特に恐れます。
そのため、お上からの締め付けがキツく、少しの綻びも許さない社内の体制はときに息苦しくもありますが、結構大変なんだなぁと共感いただけると幸いです。
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